1895年、日清戦争において勝利した日本は日清講和条約(下関条約)にて台湾を得た。以来、日本が太平洋戦争で負けるまでの50年間、台湾は日本の植民地だった。
植民地支配といえば、すぐに欧米流の搾取を前提としたそれを思ってしまう。しかし、当時の日本はいまよりもずっと勤勉で純真だった。かつての日本は、日本という国家が成立して以来はじめて取得したこの土地を、植民地としてではなく、日本の一部として本気で統治しようとしたのである。それは、児玉源太郎や後藤新平、乃木希典や明石元二郎など、一流の人間を送り込んだことや、この50年間で日本が台湾に対しておこなってきた様々な事業をみても明らかである。
本書は、日本統治時代に生まれた台湾人である蔡焜燦(さい・こんさん)氏による、現代の日本人への強い檄である。
本書の一貫した主張は「日本が台湾に残したもののうち、もっとも偉大なものは、下水道や鉄道などの物質的なものではない。「公」を顧みる道徳教育などの精神的遺産である」ということである。
この愛日家の筆者から熱い言葉で語られるかつての日本人の格調高い精神性を思うと、昔の人たちに対する誇り強さ、そして今の自分たちに対する情けなさから、こみ上げてくるものがある。
これまで何度もふれてきたが、かつて半世紀もの間、歴史を共有してきた台湾で、いまだ「日本精神」が勤勉で正直、そして約束を守るというもろもろの善いことを表現する言葉として使われている。
それは、日本の先人たちがその叡智をふりしぼって前近代的社会であった台湾を近代化させ、愛を持って民衆の教育に務めた成果なのである。これは歴史の"真実"であり、戦後日本の進歩的文化人が振りかざすような希望的推測やフィクションとはわけが違う。
(中略)
反日的な中国や、何かと歴史問題を振りかざしてくる韓国だけが隣人ではない。親日国家・台湾も日本の隣人であることを是非とも認識していただきたい。
本書の最終章「日本人よ、胸を張りなさい」に、こんな一節がある。当時の台湾人たちは、心から日本を愛してくれている。そんな愛日家の台湾のひとびとに対して、今の日本人たちは誇れる精神性をもてているだろうか。
台湾人と日本精神(リップンチェンシン)
最近のコメント